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執筆者の写真daisuke tanaka

夜道


真夜中に 雨の音しか聞こえない


象のことを思い出す

声はどこかに眠っている


遠い国の光や 眩しかった海や 思い出せない


戻ってこない色たちを抱えている


数々の温もりと冷たさ 優しさと怖さ


見えない深さは、真夜中に行き先を求めない


ただ、ここに在る 感じている情景には肌触りがある


忘れてしまった生きもの達が 静かに静かに、僕を見つめ返す


そんな時、水は少し溢れる


オレンジ色の天井を見つめている


祖父は、ずっと一人でこんな天井を見つめ続けたのだろうか


鴉が遠くで鳴いている


未明の後には この滴も乾くだろう


この夜道は明けないだろう




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