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執筆者の写真daisuke tanaka

みえない白線

更新日:2022年1月20日

駅前のベンチでアイスクリームを食べる父と娘。


親子を交互に見つめながら、僕はアイスクリームを運んだ。


93歳の誕生日を迎えた白髪の女性は、浴槽に浸かりながら

遠い目から急に僕を見つめて、「あっという間だから。。好きなことやらないと、

あとは一生懸命にやったよ・・」と言って、自らの旅の話に流れていく。


いつもよりゆっくり、桶からお湯を掬って15回くらい流し湯をかける。


久々に自分の影を見ながら街を走った。

景色はどんどん遠のいていって、アスファルトと光が眩しく残る。


そのうち頭がボーッとしてきて、何の為に自分が走っているのかを確かめながら

数え切れない車に追い抜かれて、そのうち影も感情も薄れていく。


暗くなった公園の自動販売機で間違ってボタンを押す。

出てきた缶のロイヤルミルクティーを一気飲みしながら、

3年前から随分とシワが増えた写真集のダミーを一度だけ

ゆっくりと見返した。


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