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執筆者の写真daisuke tanaka

巡り合い


去年の夏、銀座で初めての大きな個展を開いた時に一人の木彫り作家の方と出会った。

名前はクロヌマタカトシさん。


ポツリ、ポツリと大切に言葉を交わした時間と、彼が僕の写真や映像を見てくれていた

佇まいや、初めて交わした気配のようなものを今でもよく覚えている。

その後、頂いた名刺に載ってあったHPで彼の作品や言葉を見て、僕は本当に驚いてしまった。早く、彼の作品に、実物に触れたくて本当にたまらなかった。そして、去年の冬に初めて彼の個展を訪れることができた。 


そこに在る、ひとつひとつの木彫りの生き物たちの沈黙と気配に言葉を失ってしまった。

本当に澄み切った何かが、その空間を循環していて今度は自分が、ポツリ、ポツリと言葉を選びながら、感じたことを伝えようとしたけれど、なんだか恥ずかしかった。

午後の光の中で、老人の作品が一緒にいた彼女の手に包まれた時をただ撮った。

その時、老人は少し微笑んでいた気がする。


その後、一枚のハガキが届き、彼からの綺麗な文面の中に、

良かったらポートレートを撮ってもらえますか? という趣旨の言葉が在った。

僕が初めて、正式に依頼されたポートレートだった。


それから、約半年。

気付いたら、静けさに満ちたアトリエで木を彫る音とクスノキの香りにたくさん包まれて、

シャッターを切りまくる自分がいた。  

そしてその後、暗室でひたすら彼の作品と向き合い、時間の許す限りプリントしながら

濃密な時間を留めることが出来た。


この度、彼のパリでの個展に先日僕が撮った彼の作品や、アトリエの風景のようなものを

6点、同じ空間に展示させて頂くことになりました。

これは、とてもとても大切なことなので、それらの巡り合いも含めて告知致します。

もし、パリにいらっしゃる方がいましたら是非ご覧下さい。

https://www.galerie-metanoia.fr/ja/artistes-francais/3125-prochainement-up-coming-18.html


クロヌマタカトシさんに感謝を込めて。


クロヌマさんを通して生まれていく独立した「気配」たちが、深く共鳴出来ますように。

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