友人と2人で焚き火をした。
細い枝が少しずつ灰になり、小さい炎が僕達の真ん中で揺れては光り、
すぐ傍では滝の音が流れ続けた。
一本の骨がゆっくりと色を変えながら燃えていく。
光がほとんど失くなりかける度に、友人が細く優しい息を吹きかけると
仄明るく透けた木々の中から、再びきらきらと炎が瞬き、息を吹き返し
無数の灰が粉雪のように舞い上がった。
僕も友人に習いそっと静かに大きく深呼吸しながら、何度も息を吹きかけると
その度に光が瞬いて、近付くとボウっと顔がとても熱くなる。
それでも深呼吸を止めずに自分の中に在る限りの息を大きく、ゆっくりと
静かに吹き続けていると、時折身体の芯が新しく目を覚ますような心持ちになっていった。
立ち上がると、少しだけ景色が薄れてまた元に戻り、
友人が「出し切りましたね」と言うと、笑った。
帰り道、二人で沢山の石を踏みしめながら河原を歩いた。滝の音は遠くなり
友人が抱えているたったひとつの流木は、すでに彼の手に馴染み始めていた。
そこには、何もなくて時間のないものが在った。
橋の上から河原を見下ろした時、僕は緑のない道を海に向かって歩いた景色を
思い出していた。 風が強くなった。
日が暮れた食堂で、全身から燻された香りと共に鉄板焼き定食を無心に食べながら
何度も笑った。食堂を出た駐車場から山の上を見上げると、深みを増した群青色の空に
ほんのり丸い月が光っている。闇になりかけている黒い山の稜線の麓を、ゆっくりと列車が通り過ぎて行く。
じわりと深みを増すような刻を共に出来た喜びを、僕は彼の横で噛み締めていた。
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